しばしば「盲腸になった」ということで言われることのある、「虫垂炎」。

厳密に言えば、盲腸と虫垂は違うもので、盲腸の先に虫垂があります。虫垂は直径が1cm以下、長さは5~8センチ位の小さな臓器です。この虫垂に感染などが起きて、「虫垂炎」を起こすことがあります。

虫垂は腸内細菌の善玉の住処(すみか)であり,また腸内細菌のバランスが崩れたときに,正常な状態に戻す役割をしていると考えられており、過去の報告では、虫垂を切ってしまうと、切ってない人と比較して、偽膜性腸炎(抗生剤により腸内細菌がダメージをうけ、毒性をもつ細菌が繁殖する)という病気を多く発症するというものがありました。しかし、逆に、虫垂を切除したから、潰瘍性大腸炎が改善したとする報告もあり、虫垂は善玉なのか、悪玉なのかまだ一定していないようです。

さて、今回、その虫垂を切ってしまうと、パーキンソン病の発症リスクを19%抑えることが出来ていたとする報告がありました。最近は、以前にもお話しましたが、腸と脳の関係からパーキンソン病の発症を検討する議論が盛んです(~のように感じます)。

本研究においても、虫垂の中をみてみると、パーキンソン病の体内に沈着するタンパク(アルファシヌクレイン)が沈着していました。このことから、虫垂から脳内にタンパクが移動することで、パーキンソン病発症につながるのか??

しかし、虫垂を切除しても、パーキンソン病のリスクは減らないとする逆の報告もありますし、虫垂を切除するとパーキンソン病の発症リスクを増大させるとした報告もありました。

虫垂の中にアルファシヌクレインというパーキンソン病に関わるタンパクの沈着があるけど、、、といっても、虫垂を切除することで、パーキンソン病の発症リスクを下げたり、発症を遅らせたりすることが可能かどうかは、まだ一定した結論は得ていないと思います。

ちなみに、私のお腹には、まだ虫垂は炎症起こすことなく、眠っています。

Sci Transl Med. 2018; 10(465). pii: eaar5280. J Theor Biol. 2007; 249: 826-831. Gastroenterology. 2000; 119: 502-506. Mov Disord. 2016; 31: 1918-1922

New Scientist Graphic of inflamed appendixより

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