パーキンソン病について

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パーキンソン病とはどんな病気?

パーキンソン病外来

パーキンソン病は、身体の動きに障害があらわれる病気です。代表的な症状として動作がゆっくりとなる、手足のふるえ、筋肉のこわばり(関節を動かそうとする時に抵抗を感じます)などがあります。

パーキンソン病は脳内で減少したドパミンという物質を補うことにより、症状の改善を認めます。正確な診断と、内服薬治療や生活指導が必要です。また、決して珍しい病気ではありません。

脳神経内科の病気のなかで最も治療法が充実している病気の1つだと考えます。治療法も、日進月歩で進化していますので、私自身、日々勉強しアップデートを怠らないように努力致します。

現在、日本では約15万~20万人のパーキンソン病の方がいます。中高年に多い病気です。つまり今後、高齢化社会が進むにつれて、ますます患者数は増えると予想されています。決して「歳のせいだから」という理由で、放置するのではなく、きちんとした治療を受けるようにしましょう。その後の生活がまったく違ったものになります。
大切な事は、適切な治療と運動やリハビリテーションなどを前向きに日々行うことによって、充実した健康寿命を延伸することだと考えます。

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なぜパーキンソン病になるの?

原因はドパミンの不足です。

身体を動かす時になめらかに動かすために、脳から指令がでます。この指令はドパミンという神経伝達物質によって伝えられています。

通常、脳の黒質(こくしつ)とよばれる部位の神経細胞で、ドパミンと呼ばれる神経伝達物質が作られ、大脳の線条体という部分に供給されています。ドパミンのおかげで、体の運動がスムーズに行えると考えられています。

パーキンソン病は黒質に異常が起こり、ドパミンが少量しか作られなくなって、いわゆるガソリンが足りなくなって体に様々な不調が現れると考えられています。

黒質の神経細胞がなぜ変化するのか、はっきりとした原因はまだ分かっていませんが、ドパミンの量が正常な人の20%を下回ると、パーキンソン病の症状が現れるとされています。

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パーキンソン病は難病なの?

決して怖がらないでください。前向きにともに取り組みましょう

4、5年で寝たきり状態という事はありません。10年以上、上手に付き合われている方も沢山いらっしゃいます。それまでの治療方法やリハビリテーションを含めた運動をどのようにしてきたかでも変わってきます。

パーキンソン病はカタカナの病名だからか、しばしば「難病」というイメージで取り上げられます。原因がはっきり同定されず、癌のように切ってしまえば完治というものではないので、そういう意味では「難病」なのかもしれません。しかし、生活状況を大きく改善させる事は可能です。その選択肢は充実しています。なにも手出しができない「難病」では決してありません。

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パーキンソン病の3大症状

代表的な症状として、動作がゆっくりとなる動作緩慢、手足の震え(ふるえ)、筋肉のこわばり(筋強剛)があります。

  • 動作がゆっくりとなる
  • 手足の震え
  • 筋肉のこわばり

これらの症状は自分で気付かず他人から指摘されることも多いです。また、似た症状を示す病気やお薬の副作用により似た症状が出現する場合もありますので、少しでも不安がある方は一度相談に来られることをお勧めしています。

正しい診断に基づく、適切な治療がその後の健康寿命にとって大切です。

動作がゆっくりとなる(動作緩慢)

“動作緩慢”とは動作が遅くなることで、書く字が小さくなったり歩くのが遅れたり、顔の筋肉も動きにくくなるので瞬きの回数が減ったりします。顔の表情が乏しくなり、仮面様顔貌と表現されることがあります。歩くスピードも遅くなります、また歩幅が小さくなり、靴の前の方がより擦り減ったりということもあります。歩きだそうとしても最初の1歩目が出にくいという症状も認めます(すくみ足)。

手足の震え(ふるえ)

症状の中で自覚しやすいのが“ふるえ”です。じっとしている時に手や足が小刻みにふるえます。多くは片方の手足から始まって両方の手足へと症状が進行しますが、中にはふるえがない場合もあります。

筋肉のこわばり(筋強剛)

筋強剛とは、他動的に関節を動かそうとする時に抵抗を感じます。手や足をスムーズに動かせなくなりますが、本人が自覚するのは難しいとされています。

症状は同時に全て起こるのではありません。また左右差があるのも特徴です。

ある程度病気と付き合っていくと、姿勢反射障害といわれる、転びやすくなる症状も認めるようになってきます。動作緩慢・振戦・筋強剛による組み合わせが診断により重要とされています。

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パーキンソン病の治療について

MAKE ドパミン GREAT AGAIN !!
ライフスタイルに応じた治療法の選択を
過不足ない薬物療法を

パーキンソン病か否かの正確な診断がなされた後、ご本人がどのようなライフスタイルをお持ちかなどで選択していく治療薬や量も異なってきます。また、パーキンソン病の上記の運動症状だけの治療では不十分で、気分の落ち込みや、睡眠、便秘等の治療、ケアも大変重要なポイントです。

これらの様々な問題に対する正しい評価と治療が必要と考えますが、医師のみでは多様な問題に対し不十分な点も出てくると思います。そこで様々な職種からなる多職種によるアプローチ (Interdisciplinary team approach)を図っていきたいと考えています。

この「多職種連携」という言葉は、最近、様々な場面で使用されています。ただ医師以外の職種の人たちがその患者さんに接するというのではなく、それぞれの専門、特技を生かしてその患者さんにアプローチを行い、家族、介護、地域の皆が対等の関係性の中で意見を集約し、患者さんにとってより良い方向にむかっていくための方策を進めていく必要があります。私自身、留学中に身をもってそのシステムの実際とその良さを経験してきました。私どもも、より良いチームになるよう、改善していきたいと思っています。

“MAKE ドパミン GREAT AGAIN!!”

パーキンソン病の治療は脳内のドパミンを増やすお薬による治療をまず行います。多くはレボドパ(原料)やドパミンアゴニスト(ドパミンの代わりをする)、MAO-B阻害薬(まおびーそがいやく)(補助薬)という種類の内服薬が用いられます。脳内で不足したドパミンの働きを補うことで症状を改善します。また、ドパミン系ではない経路から攻めて、運動症状を改善させる内服薬もあります。また内服だけでなく、貼るタイプのお薬もあります。基本的にはいくつかの種類のお薬を組み合わせて治療していくことになります。ここ5年間の中でも約5種類の新たな治療薬が発売されています。常に進化していて、今後も新しい薬剤が出てくる予定です。

どの薬をどれくらいの量、内服するのかは、患者さんの症状や年齢、ライフスタイルなどを考慮して決めますので、病状に合わせた適切な治療のために、定期的な診察が必要となります。普段の生活でどういった事がお困りか、遠慮なくおっしゃってください。またお薬の飲み忘れが無いように注意して頂きたいと思います。

数多くの薬剤がありますが、それぞれの薬剤には、それぞれどれくらいの量が良いのかがあり、薬剤によっては、じっくり数錠使用して効果が表れるものもあります。数多くの薬剤をふりかけの様に少量ずつ使用というのが良いという訳ではありません。また、もっと良くなるであろうに、投与量が不十分ということもありえます (under medication)。良くなるものも良くなっていない状態です。過不足なく、本人に必要な量で使用するのが良いという事だと思います。

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デバイス補助療法 Device-Aided Therapy

病気が進んだ時期であっても。
治療法は進化しています。
DBSとデュオドーパ

飲み薬の治療をある年数以上続けていると、薬が効いている時間、効いていない時間が出てきます(“ウェアリング・オフ現象”)。また、手足がくねくねと勝手に動いてしまう“ジスキネジア”と呼ばれる運動合併症が起こる場合があります。これらの問題解決のために、薬の量や種類、服用の仕方を調整したり、もしくは新たな治療法を選択することもあります。

それらは、デバイス補助療法とよばれる治療法です。脳深部刺激療法 (DBS;ディービーエス)と呼ばれる脳を電気刺激する治療やお腹の空腸に薬液を持続的に流すduodopa療法(デュオドーパ りょうほう)などです。それらはウエアリングオフやジスキネジアといった症状を改善させ、動ける状態を1日の中で安定させることで、よりよい生活を送ることを目的とします。またこういった治療が自分にあった選択肢であるのか、きちんとした判断とその後のメンテナンスも重要です。

デバイス補助療法を受けた後も、内服治療を上手に組み合わせて車の両輪のような関係でよりよい生活を送る事を目標にします。決して”Last Hope (最後の神頼み的な治療)”と考えるのではなく、健康寿命の充実のため、将来的な1つの治療手段と考えてあらかじめ頭の片隅にでも考えておくのも良いと思います。

パーキンソン病の治療は、その時期、その時期に応じた最適な治療法が数多くあります。その中でご自分に何が最適であるのか、普段の生活状況などと合わせて決めていきましょう。

DBS、デュオドーパの調整も当院で可能です。

DBSやデュオドーパ後の方の調整も当院で可能です。 難病医療助成や身体障害認定など社会的支援の活用についてのご相談にも積極的に対応致します。

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リハビリテーション

大きな動作、身体を伸ばすイメージ、声も大きく
楽しく、自発的に

パーキンソン病とうまく付き合うにあたって、リハビリテーションも非常に重要です。できれば、内服薬と同じように、その方のライフスタイル等に応じて、リハビリテーションのメニューも個々でオーダーメイド出来ると良いと思っています。

ダンスなどで大きな動作を行うことが良いようです。ヨガや太極拳などの有効性を示した報告もあります。
LSVTというリハビリも効果が認められており、運動症状や発声にも効果があるとされています。身体を動かすことで、気分転換にもなります。
最近では音楽に合わせて身体を動かすリハビリも行われています。

転倒と誤嚥を避けるべく、日常生活をおくる工夫が将来にとっても非常に大切です。また日常生活においても、買い物や食事の支度などもリハビリにつながり、継続することが大切です。

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関係ないと思ってる症状も実は。。。

うつ気分、やる気の低下、睡眠障害、便秘など

パーキンソン病の方における脳内の神経変性がドパミン系だけでなく、セロトニン系などにも及ぶために、うつ気分などを認めます。様々な非運動症状を認めますが、発症前から認めるもの、病気の進行に伴い認めるもの、薬剤により増悪するものなど、画一的な症状ではありません。これら非運動症状はQOLに大きな影響を及ぼすため、大変重要な問題です。

約2割から5割の方で気分障害を認めます。気分障害の治療もパーキンソン病にとってとっても大切です。前向きに治療に取り組むことが治療効果に影響します。睡眠に関しては、様々ありますが、治療薬の影響や病気の性質で日中の眠気を来しやすい場合もあれば、「むずむず脚症候群」は入眠時に足がむずむずして動かすと軽快するといったもの、「レム睡眠行動異常症」は夜に夢を見るときに大きな声を上げたり体を激しく動かしたりするものです。よくお話を尋ねると、同様の症状を認める方がいらっしゃいます。

また、便秘、嗅覚低下も頻繁に認めます。元々便秘がちな方の方がパーキンソン病になりやすいというデーターもあります。治療薬の影響でも腸の動きが低下することもあります。また便秘をうまくコントロールしないと、治療薬の効果にも影響してきます。

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受診の前にご準備頂きたいもの

受診の前にご準備頂きたいもの

簡単なメモで構いません。
受診の際に以下の内容をご準備下さい。

  1. いつ頃から、どのような症状が出てきたのか。
  2. その症状は悪化しているか
  3. 現在、普段の生活に支障を来していることはどんな事?
  4. すでに治療を開始されている場合は、今までの治療内容(お薬の名前と量;お薬手帳があると良いです)とその効果はどうだったか。また今まで受けた検査内容が、もしわかればお願いします。
  5. 他に現在、治療中の病気などありましたら教えて頂けると助かります。